通訳案内士試験において、英語試験の免除が受けられるからということで、1次試験の英語を受験せず、二次試験(面接)だけを受験して合格される方も多いと思います。
今回は、通訳案内士試験の英語の試験を受けて合格した者として、英語試験受験で得たものなどをお伝えしたいなと思いました。
実は私は2009年に合格したため、英語は全て筆記試験でしたが、現在はマークシート式に変わったようですね。
以前の筆記試験では、通訳ガイドの仕事をするにあたって非常に重要な次の5つのスキル、TOEICや英検1級でしっかりと試されることできないスキルを試される試験でした。
2018年の過去問を見てみましたところ、全てマークシート式になっておりましたが、合格した後にも必要となる語学運用に関するスキルについてまとめてみました。
ガイドになったら必要となる語学のスキル
ここからは、TOEICのスコアアップや英検1級合格のためには不必要だが、通訳ガイドの仕事をするためには非常に重要なスキルについてまとめました。
長文をわかりやすく要約する力
ガイドの仕事を準備する時、多くの資料や情報を要約する力が必要です。
資料を集めてきて勉強し、たくさんの情報を全部話しても、ダラダラと長い話をすることになり、お客様は退屈です。
要点をわかりやすくまとめて、興味深い話として伝えるスキルが通訳ガイドには必要です。
人の話をじっくり聞いていられる時間というのは数分だと感じます。
資料を要約してわかりやすく手短に話すスキルをアップするためには、それなりの練習が必要です。
日本的事象の幅広い知識
スキルというわけではありませんが、日本に関する多くのことを説明するためには、幅広い日本的事象の知識が不可欠です。
通訳ガイドの仕事をする時、この日本的事象を扱うことがいかに多いことか。
食事をしても、神社やお寺に参拝に行っても、観光地の行く先々で日本的なものを質問されることが多いです。
「これは何ですか?」
といった基本的な説明を求められることや、
「なぜ日本人はこのような行動をとるのか?」
など、日本人の特徴や宗教的なこと、哲学的なことなども質問されます。
英検1級取得しているからということで、英語試験を免除されると、二次試験(面接試験)からの受験となります。
TOEICや英検ではこのような問題が出されることがありません。
通訳案内士の二次試験では上記のような質問を問われるのですが、5問~7問くらいだと思います。
通訳ガイドの現場では日本的事象を扱うことは日常茶飯事です。
日本的なことを、1次試験でもたくさん問題として出題されますし、ガイドの仕事に直結する出題です。
ですから、将来的にどんどん仕事をされたい方は、英検1級を取得していたとしても、TOEICで高得点を取っていたとしても、日本的事象に関する知識は増やし、それを外国語でわかりやすく説明するスキルを高めることは非常に重要だと思います。
和文から英文へ、英文から和文への変換力
通訳ガイドの現場では、英語を和約する力や、和文を英訳する力も試されます。
TOEICや英検では、和文英訳力や、英文和訳力をしっかり試される機会はありません。
実際の現場においては、和文から英文へ、英文から和文へ変換する力が最も試されるわけで、一番大事なスキルだといっても過言ではありません。
英検1級では英作文(エッセイ)の問題がありますが、お題に対して、自分の意見を述べるエッセイですから、与えられた日本語や英語の文章を丁寧に翻訳するスキルは問われません。
通常のTOEICに関しては、マークシート式ですから、このような力を試すことができません。
正確な文法、微妙なニュアンス
私が受験した時代の、以前の通訳案内士試験の英語テストはマークシート式ではなく、記述式でした。
例えば、英文を要約する問題だったり、和訳する問題であれば、微妙なニュアンスまで翻訳されているかどうかが一目瞭然になります。
マークシートでは測れない受験者の実力があらわになるのです。
英検1級の英作文は記述式ですが、自分の意見を自分の言葉で書く問題ですから、指定された日本語の文章を翻訳するというわけではありません。
よって、英語や日本語の微妙なニュアンスまで翻訳できるかどうかを試されるわけではありません。
ましてやTOEICはマークシートですから、正確な翻訳力を磨く必要はあまりありません。
通訳ガイドは、外国人ので話す仕事ですから、小さなニュアンスの違いも時には大変な勘違いを引き起こしてしまったり、文化的な背景に関して摩擦を生んでしまったりということもあります。
ですから、正確なニュアンスまで表現できるような翻訳力、通訳力、語彙力、文法力を身につけることが必要になってくると思います。
1次試験の勉強は結局2次試験にも大いに役立つ
私は、たとえマークシート式であろうとも、英検1級保持者、TOEIC高得点保持者に、通訳案内士の1次試験の受験をしてほしいと思っています。
1次試験の勉強をすることは、2次試験(面接)に直結しますし、現場でも大いに役立つ試験であると思うからです。
1次試験を免除された方は、2次試験の勉強だけに集中したらよいと思われるかもしれませんが、結局、1次試験の勉強も2次試験も勉強も、範囲を全部カバーしないといけないという点で同じです。
結局、2次面接に合格するためには、たくさんのことを覚える必要がありますし、更に、現場で働く時に必要となる情報やスキルなので、早めに1次試験を含めて総括的に勉強するに越したことはないと思うのです。
結局は2次試験のために向き合わないといけない広いテスト範囲ですから、2次試験のためだけに覚えるのはもったいない。
せっかくなので、1次試験から包括的に勉強されることをおすすめしたいです。
まとめ
通訳案内士試験は、現代社会の背景がどうあるかによって、合格者が増減してきました。
多くのガイドを出したい年には合格が甘くなりましたし、少し制御すべき年は、狭き門になっているようです。
結局、力試しのために受験した方を除き、実際に通訳ガイドとして働く人々にとっては、通訳案内士試験はかなり役立つ有効なものだと思います。
実際、言語運用能力が低いガイドさんは長期的には淘汰されていくと思いますし、受験する段階でしっかりとした語学運用力を身につけているべきだと思います。
英検、TOEICと、測定できる能力が異なるように、通訳案内士試験では、大切なスキルが磨けているかどうかを測ることができます。
試験科目の免除を受ける選択肢も増えましたが、個人的には、1次試験から通訳案内士試験を受験される方が増えることを願っています。